第1話 チーム作りと活発なミーティング

■メンバーの把握は資料だけではない

 野口のコンサルティングは今日からスタートです。新しい期もスタートしました。さっそく、営業3課の様子を見て行きましょう。

 新人マネジャーの実直くん、課一番に出社して、机の整理整頓、自分の身の回りの準備を済ませたようです。やる気があることはいいことですね。

 始業時間を迎え、4人もメンバーも揃いました。野口同席のもと、実直マネジャー初の朝のミーティングです。

実直「今日から、マネジャーとして営業3課を率いることになりました。皆さんよろしくお願いします」

実直くんの挨拶、笑顔もなければ淡々としています。

花咲「アシスタントの花咲(はなさき)です。よろしくお願いします」
天辺「天辺(あまべ)です。よろしくお願いします」
音無「音無(おとなし)です。よろしくお願いします」
張切「張切(はりきり)ッス。宜しくお願いします!」

実直「それでは頑張ってまいりましょう」
さっぱりとした感じで、実直マネジャーの初ミーティングは終了しました。
野口的には、あまりにあっさりしすぎている気がしますね。これはちょっとミーティングです。

野口「初めてのミーティングおつかれさまでした。メンバーの名前はおぼえましたか?」

実直「今回が全員での顔合わせだったんですが、僕自身は彼らの名前と顔は覚えています。同期である天辺もいますし、それぞれの前期の業績も資料で把握していますよ」

野口「予習はバッチリだったわけですね。ではでは、みんなの様子はどうでした? 表情は?」

実直「え? 様子や表情ですか? たぶん普通じゃないですかね」

実直マネジャー、メンバーの情報は資料で把握してはいるようですが、本人たちの表情には特に注意はしていないようです。 惜しい、そしてなにより……もったいないです!

■マネジメントするのには何が必要なのか

ここで少し、先ほどのミーティングを振り返ってみましょう。
ポイントを書きだして整理してみます。

  1. 実直マネジャーは部下の名前や過去の仕事内容、業績の把握をし、事前情報はしっかりおさえていた
  2. 実直マネジャーが簡単な挨拶をしたため、そのあとのメンバー全員が同じような挨拶をした
  3. 挨拶だけで終了し、ミーティング時間をとったにも関わらず、5分程度で終了した
  4. 意見の交換もなく、初日のメンバーの心理的な情報は得る機会すらなかった

 1の情報把握はもちろん大事ですが、自分の立場が何なのか? それを思い出してください。
マネジャーです。部下をマネジメントするんです。

悩んではないか、複雑な状況になっていないか……そういったことを知るのは、日報を見るよりも部下の表情が物語っていることが多いです。
書きだしてみるとわかるのですが、実直マネジャーが2の段階で簡単な挨拶したことにより、その後の3と4につながってしまった形になっています。

実直「では、僕はどのような挨拶をすればよかったんですか?」

野口「どんな挨拶が良かったのか、その答えは一緒に考えましょう。ヒントは2つ、『上司部下ではない信頼関係』と『効率のいいミーティングを心がける』こと」

実直「うーん……難しそうですね」

■第一歩を踏み出すことが大事

 信頼関係を築き上げるのは一筋縄ではいかないです。もちろん、それは実直マネジャーもわかっているようです。

実直「初日に信頼関係を築くことなんてできるんですか?」

野口「できるわけないですよ。実直マネジャー、ちょっと急ぎすぎですね」

実直「えー! それじゃ、僕はどうすればいいんですか?」

野口「いきなり上手く行くことばかり考えるのではなく、信頼関係を築くのではなく、“築き始める”と考えるんです」

 信頼関係の構築はいきなり完成するものではありません。成功や失敗を繰り返した先にあるもの……それが、信頼関係です。
いきなりゴールではなく、はじめの一歩を踏み出すことが大事なのです。

■一方通行はコミュニケーションではない

実直「踏み出す一歩がわからないんですよね。正直、人間関係はめんどうですし……」

実直マネジャー、さっきから浮かない顔だと思ったら……。
こら! と言いたいところですが、性格は人それぞれ、逆に無理をすればあとあとボロが出るのも事実です。

野口「最初は一回でもキャッチボールが成立すればOKですよ」

実直「最初に投げるボールがわからないんですよ……」

野口「それでは、ちょっと野口がボールの指導をしますね!」

社会生活と同じく、マネジメントも信頼関係・人間関係を構築していなければできません。
それをわかっているからこそ、実直マネジャーは硬くなってしまっているんですね。

朝のミーティングのような挨拶メインのレスポンスが希薄なミーティングでは、相手の考えや意見を集めることができるでしょうか?
できませんよね。
では、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションはどのようにすればよいでしょうか?

朝のミーティングのような挨拶メインのレスポンスが希薄なミーティングでは、相手の考えや意見を集めることができるでしょうか?
できませんよね。
では、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションはどのようにすればよいでしょうか?

まずは、自分が「どんな人間で」、「何を大切にし」、「どうメンバーと関わりたいと考えている」のか? そして、「どんなチームを目指す」のか?
それを伝えるところから始めましょう。
ありがちなのですが、「背中を見て感じて欲しい」「一緒にしていれば伝わるはず」という考えは、信頼関係ができている状態で発揮されるのであって、普通は言葉にしないと自分の気持ちは伝わりません。
新任のマネジャーとして、まず自分の考え方や思いを伝えることが大事です。
その上で、メンバーがどう思ったのか? どう感じたのか? ということについて、コメントを聞いてみましょう。
自分の思いを話すことによりボールを投げ、相手の感想を聞くことによりボールを投げてもらう……これだけで、キャッチボール=双方向のコミュニケーションが完成していますよね。最初ですし、まずはこれで合格ではないでしょうか。

実直「なるほど。そういうやり方ですと、僕でもできそうですよ」

野口「次は双方向のコミュニケーションを活かす『効率のいいミーティングを心がける』ことですね」

■効率の良さは”意識すること”で生まれる

実直マネジャーも今までにたくさんのミーティングに参加したはずです。
当たり前ですが、良いミーティング、悪いミーティングもあったはずです。

野口「今までで、良かったミーティングはどんなミーティングですか?」

実直「うーん、きちんと議題について話し合えたミーティングですかね。あんまりだったのは、何も決まらなくて、結局時間の無駄だったミーティングですね」

実直マネジャー、さすがわかっていますね。
ミーティングの良し悪しは、目的を達成できるかどうかで、大きく変わります。

◎事前準備

・ミーティングのテーマを考えておく

何のためのミーティングなのか、どこまで決めるのかを明確に自分の中で決めておきます。
必ず決めてください。定例ミーティングではここがあやふやになってしまいがちです。

・必要な情報を集めておく

ミーティングは一人でするものではありません。参加者の時間をも使っています。参加者の質問に答えるための情報はもちろん、必要な情報は他の参加者のサポートやフォローにもなります。

・アジェンダの作成

ミーティングでの課題や議題を簡単にまとめたものを作成します。
脱線しがちなミーティングがまとまりやすくなります。

◎事前準備

・趣旨と議題に対する同意を得る
当たり前のことですが、ミーティングは自己満足の場ではありません。○○したいので××について話をしたいというミーティングの設定をします。

・活発な意見交換ができる雰囲気作り

ミーティングになれば、みんなが意見を言う……なんてことは幻想です。自由に意見を言ってもリスクがないという状態を雰囲気でも伝えていくことが大事です。

・タイムテーブル提示

ミーティングの時間は有限です。時間内にすべてが決まるわけではありません。進展のない議題に関してはきっちり時間を区切り、他の案件に移ることも大事です。

・論点と各意見の整理

何について話しているのかということを、きちんと共有しずれないように確認し、出た意見をきちんと整理しましょう。意見を整理することは、意見を言った人間に対する尊重にもなります。

実直「なるほど。たしかに、野口先生の言うとおりですね。事前準備などをきちんとしているとミーティングをある程度、形にすることができそうです」

野口「あとは、ミーティング中に『何のためのミーティングなのか』を見失わなければ、きっとうまくいきますよ」

実直「なるほど! 今回だと『顔合わせ』だけでなく、『課の方針などを共有する』などを目的にすればよかったんですね。次のミーティングはそうします!」

■ミーティングの積み重ねがチームを作っていく

そして、実直マネジャーは初めての週末ミーティングを迎えました。
今回はアジェンダの作成や事前の情報収集など、いろいろ考えているようですが……

実直「今週はこのミーティングで締めます。今週はみなさん、かなり忙しかったですし、ヘトヘトだと思いますが、もう少しだけミーティングに付き合ってください」

実直マネジャー、きちんと野口のアドバイスを踏まえ、簡潔ではない挨拶もしているようですね。

実直「今回のミーティングは、今週の各自の結果と来週の行動、それと、このチームで1週間やってみて、感想や意見を交換したいと思います。今週もこれで終わりですし、肩の力を抜いて、自由に意見の交換したいと思っています。OKでしょうか?」

実直マネジャー、皆の表情や様子を見ながら、言葉を選んで、会議を進めているようです。
そうそう、チームが萎縮すると意見が一方的になったり、全く意見が出なくなりますからね。
きちんと問いかけも交えて、双方向のコミュニケーションを意識しているようです。ぎこちない部分もありますが、まずはクリアといったところでしょうか。

どうやら、週初めとは全く違う雰囲気でミーティングを行えているようです。
言葉を少し変えるだけで雰囲気も変わる、これを実直マネジャーは学んだようですね。
自分のことだけを考えて、上司に報告すればよかった立場から、チーム全体を考え、良い方向に向けて行くことを考えなければいけないマネジャーに。
実直マネジャーのマネジメント道は始まったばかりです。

そして、一ヶ月後……。

張切「実直さん、今度の課の飲み会、天辺さんが行かないって言ってるんスよ……」

困った顔で張切さんが実直マネジャーに相談しているようですね。
次はどんな問題点が営業3課に起きているのでしょうか?

続きは第2話で……