第13話 ビジネスとSNS

■ネットを使ったリレーション構築

 この前は引き抜き騒動(12話参照)もありましたし、ちょっと実直マネジャーの様子でも見に行きますか……。
おや? あれは実直マネジャーじゃないですか。

実直「あー! 野口先生!」

野口「実直マネジャー、なにやら忙しそうですね」

実直「ちょっとしたドタバタで、お客様の対応していたんですよ」

野口「その紙袋は満足割烹亭さんですね。あれ? そこは張切さんが担当していたんじゃないですか?」

実直「今は僕が担当なんです」

野口「何かあったんですか? ちょうどお昼ですし、お話がてらご飯でも」
実直「あ! はい!」

 話を聞くと、1月下旬に実直マネジャーは満足割烹亭の担当になったとのこと。
そこには、先月まで絶好調だった張切さんの思わぬミスがあったとか。

野口「張切さん、最近は自分のキャラをうまく使って、お客様と良いリレーションが築けているとばかり思ってましたよ」
実直「今でもお客様に気に入っていただいてはいるんです」
野口「それでは、何が原因なんですか?」
実直「……野口先生はKaokaobookをどれくらい活用されてます?」

野口「楽しく活用していますよ」
実直「そのKaokaobookが原因なんですよ……」

野口「えー!」

■SNSでリレーションを強化する

 張切さんは体育会系出身で、上下関係や自分の振る舞いに関しては先輩後輩で鍛えあげられた経験から、たくさんのお客様にかわいがってもらっています。
そんな張切さん、昨年6月頃に大学の同級生から誘われ、Kaokaobookを始めたようです。
人懐っこい張切さん、お客様とKaokaobookでも繋がり、Kaokaobook内の異業種交流会にも積極的に参加し、次々と繋がりを作っていったようです。

実直「野口先生、満々和食さんってご存知ですよね」

野口「ああ、全国展開している和食チェーンですよね」

実直「そうです。そこの西日本統括の多部平(たべひら)課長と張切さん、Kaokaobookで仲良くなって、満々和食さんのグループ入って釣りに行ったり、多部平課長と飲みに行ったりしているんですよ」

野口「ほー! それはいいですね」

実直「うまくリレーションを構築しています。仕事にもつながっているんですが……」

野口「Kaokaobookで何かあったんですか?」
実直「ええ、その通りです」

 1月下旬、張切さんは多部平課長に西日本統括部新年会に誘われます。
これは、多部平課長の張切さんに西日本の店長たちを紹介したいという気遣いでした。
張切さんは、実直マネジャーに参加したいということと、店長を紹介していただけるということを伝えます。

 当日、張切さんは普段よりも多くの名刺を用意し、張り切って出かけていきました。

実直「年齢が近く、意気投合した店長もいたようで、それは良かったと思います」

野口「波に乗っている感じだったんですね」

実直「張切さん、課長とその仲良くなった店長とのスリーショットを投稿したんですよ、Kaokaobookに」

野口「いいんじゃないですか」
実直「いいんですよ。いいんですけど、コメントに『今年は満々和食さんと一緒に成長する年! 全力を尽くして目標達成のお手伝いをします!』というのを書いちゃったんですよね」

野口「熱い感じでいいじゃないですか! 張切さんらしい感じですし」
実直「張切さんの担当企業の中に競合である満足割烹亭さんもいるんです。その関西SVの佃(つくだ)さんが、Kaokaobooksで張切さんと繋がっていたんですよ……』というのを書いちゃったんですよね」

野口「あぁ……それは……」

 当日、店長と繋がり申請をし、Kaokaobook内友人の数もぴったり100人! 大喜びだった張切さん、土日を充実した時間にすべく、朝の日課のKaokaobookチェックすると……。

 なんと、友人の数が99人になっています!

■不用意な投稿は……

 誰だろう……思い当たるフシもないし……と思っていた張切さん、念入りに調べると満足割烹亭佃SVがいません。

(満々和食さんと満足割烹亭さんは、仲が悪いわけでもないけど競合他社……しまった! 調子に乗りすぎた!)

 背筋に変な汗が伝うのを感じた張切さん、急いで佃SVにメッセージを送ろうとしましたが、名前の部分がクリックできません。
どうやらブロックされてしまったようです。
怖くなってしまって、佃SVに電話をすることができません。

 そして、週明けの月曜日。
実直マネジャーのもとには、佃SVからの担当を変えてほしい旨のメールがきていました。

実直「張切さん、満足割烹亭さんからメールが来ているんだけど、これ……」

張切「申し訳ありません!!」
実直「ど、どうしたの?」

張切「実は、自分のKaokaobookで満々和食さんの新年会の様子を投稿したんスけど、それをご覧になった佃SVにブロックされました!」
実直「……担当変えのお願いなんて早々ないからびっくりしたけど、そういうことだったのか……」

張切「全部自分のせいッス! 申し訳ないです……」
天辺「で、なんて書いたんだ? 見せてみろ」
実直「……あ、天辺」

張切「これッス」
天辺「おまえ……やっぱバカだな」
張切「す、すみません……」
天辺「張切、よく聞け。おまえは2つ大きな勘違いをしている。オレにはわかる」
実直「2つ? 僕にも詳しく聞かせてくれないか」

 天辺さんは早くからSNSを始め、Kaokaobookも日本語にローカライズされる前から利用していたようです。
そんな天辺さんが指摘した勘違いとは……。

■誰が見るかわからない。それがインターネット

 天辺さんが指摘した勘違いは2つ。
張切さんは、一体どのような勘違いをしていたのでしょうか。さっそく見てみましょう。

●張切さんのSNS利用法は、あきらかにビジネスでありプライベートではない
張切さんの繋がりは同級生が3割、あとは勉強会や異業種交流会、取引先での繋がり。
その人達は張切さんのプライベートな顔ではなく、「株式会社アド・ナンデモ・エージェンシー営業マン」というパブリックな顔で繋がっている部分が大きい。
張切さんは会社の看板を背負って繋がりを作ってきた。だから、ただのプライベートSNSのように責任が張切さん個人ではなく、会社にまで責任がかかってくる使い方をしている。

●SNSは知り合いや友人だけのクローズドな空間ではない
張切さんは繋がりを作りたいという思いが強く、公開範囲は常に“全世界”になっている。
コメントしてくれる人や自分が見える範囲は知っている人だけ、しかし、張切さんの行動は注目のされている/されていないはあれど、全世界の人が見れる状態になっている。
知り合い、友人などのコミュニティだと、付き合いの長さから大目に見てもらえることが多々あるが、知り合いでない人は投稿内容だけでジャッジをするということを念頭に置く。

天辺「もちろん、オレだって取引先の人との繋がりをKaokaobookで持っている。お客様にとって、オレの行動がうちの会社の採用基準なんだ」
張切「……はい」
天辺「もし、オレがルーズな行動をとってみろ、お客様は『こんなルーズな人間を雇っている会社は信用できない』と思わないか?」
張切「思うッス」
天辺「Kaokaobooksには公開範囲を細かく決められる。人間、誰しも羽目を外したくなる瞬間はある。そういうときは公開範囲を細かく設定するんだ。わかったな」
張切「……はい。わかったッス」
天辺「お前のSNSをリレーション構築に使おうとする貪欲さ、それは嫌いじゃない。まぁ、気にするな。あんまり自分を責めても時間は戻らないしな。こういう時、責任を取るためにマネジャーがいるんだし」
実直「え!? うーん、まぁそうだな。二人で考えようか」

張切「はい!」

 SNSでの炎上騒動の発端はこういう認識のズレですもんね。
天辺さん、さすがに冷静ですね。
ここから、どうするのか、あとはマネジャーの仕事です!

■現実と向き合う

 ここからは営業マンとして、どうすべきなのかを考えていく部分ですね。

実直「インターネットに関しては天辺がなんとかしてくれたんですよね」

野口「ここからは厳しいですね」
実直「直しました! ですので、今までどおりのお付き合いお願いします! というわけにはいきませんし」

野口「そうですね。どこかで落とし所が必要ですね」

 実直マネジャー、まず張切さんに”ご迷惑をおかけするかもしれない“という部分で、満々和食さんにもお詫びしないといけないということを説明し、謝罪に同行しました。
幸いにも多部平課長が、「こちらも飲ませすぎたね。すまないことをした。我々は気にしていないから」とおっしゃっていただき、張切さんも胸をなでおろしました。

 次は、満足割烹亭さんへの謝罪です。

その前に、張切さんにはマネジャーとして”先方の意向次第では担当を外す”という選択肢を検討していることを伝えました。さすがの張切さんも落ち込んでいたそうです。

実直「結果、満足割烹亭さんは僕が当面担当することになりました」

野口「仕方ないですね」
実直「先方の佃SVも張切さんに怒っているわけでもなかったんですが、けじめとしての担当替えという形です」

野口「大人が朝メールした内容を夕方に改めるわけにもいかないですしね」

実直「何も張切さんが出入り禁止になったわけではないですし、広告申込書などの書類は彼に持って行ってもらおうと思います」

野口「ふふふ、営業マンの反省期間ですね」
実直「三ヶ月をめどに先方にも説明して、担当に戻ってもらう予定です。本人には伝えていませんけどね」

野口「それでいいと思います」

 インターネットとの関わりに関して、張切さんは多くの学びを得たと思います。
営業マンとしても、リレーションの構築の繊細さ、それに伴う対応の厳しさを学べたのではないでしょうか?
さて、野口もSNSの更新をぼちぼちいたします……。

(14話に続く……)