第15話 ラストスパート! のはずが……

■期末、だからこその営業会議

 3月を迎え、期末に向けての営業会議に野口も参加です。
思えば今期が始まったころは、営業会議の形式を野口に聞きに来ていた実直マネジャー。
今では、自分が中心になって会議を運営しています!

各自の案件に対して、

  • 1. 決裁者への確認が終わっているのか
  •  
  • 2. 予算や内容をきちんと把握できているか
  •  
  • 3. お客様の案件に対するニーズの高さを理解しているか
  •  
  • 4. 社内体制の進捗状況が確認しているか

これらをきちんと営業マンが確認できているのか、それを丁寧にチェックしていく実直マネジャー。
案件をチームで共有し、売上を合わせていくと見えてきたのが……、営業3課の年間売上目標の達成!
具体的な到達が見えているので、良い雰囲気で進行していますね。

 目標の到達度も見えていますし、ひとまず安心のようですね。
チームワークを感じられる良いチームになったと思います。
ランチ会も定期的に行われているようですし、だいぶと営業3課がどんなチームなのか、はっきり形作られてきているようです。

■突然のキャンセル!

 あれから一週間……。どうなったでしょうか?
あれは天辺さん? 何やら眉間にシワを作りながら、すごい怖い顔で帰ってきました。

天辺「実直、ちょっと」
実直「うん? いいよ」

 これは気になりますね……。ミーティングルームに二人で入って行きました。
ちょっと聞き耳をたててみましょうか……。

天辺「立上(たてがみ)パッケージ株式会社さんはわかるよな」
実直「うん。3月中旬から大型中途採用を行うお客様……だよね」

天辺「立上パッケージの担当者さんから延期をお願いされた……」
実直「え!! 本当に」

天辺「ああ、マレーシアの現地工場で不手際があったらしく、現場のマネジャークラスの多くが1ヶ月ほどフォローに回る……だから、一ヶ月間は中途採用の選考そのものができなくなったらしい」
実直「……仕方ないか……。今、申し込み状況はどうなってる?」

天辺「WEBはすでに入稿済みだな。あとはまだデザインで止まっている」
実直「よし。僕と天辺でとりあえず止められるところは全部止めよう」

天辺「WEBに関しては、代理店との付き合い的にもオレが行く。社内の進行は頼む」
実直「よし、とりあえず急ごう!」

 大変なことになりました。 立上パッケージ株式会社は、来年5月に京都営業所を開設する予定で、大型の中途採用プロジェクトを進めていました。1月から天辺さんも立上パッケージ株式会社の会議に同席するなど、大型採用らしい進行で進んでいましたが、まさか、こんな形になるとは……。

■できることをする。まずはそこから

 実直マネジャー、野口に気付いたようですね。

実直「あ、野口先生!」

野口「どうも大変なことになっているようですね」
実直「はい。天辺との会話では、落ち着いた対応ができたと思いますが、正直、今はまだ受け止められません

野口「大口のお客様ですしね……」
実直「天辺も口に出しませんでしたが、今期、これで未達がほぼ確定ですよ……。どうしたらいいですかね

野口「……実直マネジャー。あなたのチームのマネジャーは誰ですか?」
実直「僕です。正直、マネジャーとして、どういう姿勢で臨めばいいかわからないんですよ」

野口「実直マネジャー。もう、あなたは答えを見つけていますよ」

実直「どういうことですか?」

野口「天辺さんとのミーティングでは、やれることから始める、できることをする、そういう流れでしたよね? それでいいんですよ」

 今のこの状況で、できることは限られています。それは実直マネジャーもわかっているはずです。“何もしない“のではなく“できることから始める“という選択肢を選んだ実直マネジャー。それでいいんです!

実直「でも、未達になりそうですよ」

野口「それじゃ、それをチームに伝えるんですか?」

実直「伝えられません」

野口「わかってるじゃないですか。実直マネジャーのチームなんですから、実直マネジャーが決めるんです」
実直「わかりました。やれるだけのことを頑張ります」

■方針を決めるのがマネジャー

 翌日の朝、緊急のミーティングを行う実直マネジャー。
昨日、遅くまで広告計画中止の処理をしていた実直マネジャーと天辺さんは心なしか眠そうですね。がんばれ!

実直「昨日、少し話したけど立上パッケージさんの中途採用プロジェクトが延期になったんだ」

天辺「……すまない。オレのお客様からこういうケースを出すことになって。」

実直「天辺のせいじゃない。それに天辺が今期、どれだけ貢献してきたかは、社内の誰より僕達が一番知っているよ」
張切「そうッスよ。天辺さんを責める人間はここにはいないッスわ」
音無「も、もちろんです、はい」
実直「結論から言います。厳しいとは思うけど、営業3課は今期の目標を諦めるつもりはないです」

全員「……」

実直「だから、みんなもそのつもりでいてほしい。今、立上パッケージさんの売上がなくなったという現実と、僕らができること、やるべきこと……それが何か、できたらアイデアがほしい」

花咲「なるべく早く……って感じですよね。私も考えますよ!」

実直「ありがとう。目標は年間売上目標の達成、それだけ。どんなやり方でもいいから、明日のミーテングで聞かせてほしい。もちろん僕も考えるし!」

天辺「ああ、オレも考える」

音無「ま、まかせて下さい!」
花咲「実直さん、目標達成に向けて頑張っていきましょうね♪」

 うまくまとまりましたね。
きっちりと方針を決める。できることから始めるという意思表示、実直マネジャーさすがです!
おや……、その割には、いまいちぱっとしない顔ですね……。

野口「実直マネジャー! いいミーティングでしたね」

実直「え、ええ、ありがとうございます」
野口「どうしたんですか? すっきりしない顔して」

実直「野口先生、少しいいですか?」

■自分を納得させ、前に踏み出す

 実直マネジャー、現状を伝えたらみんなパニックになり、どう収拾をつけるかまで考えてミーティングをしていたようです。
それが思ったよりも、みんな前向きで拍子抜けしたんですね。

野口「それは信頼されているということですよ」
実直「そうなんですかね……」

野口「この1年の実直マネジャーとチームのリレーションの成果ですよ。胸を張って!」
実直「……その信頼に応えられるが心配なんですよ」

野口「何かあったんですか?」
実直「正直、達成できる気がしないんですよ。でも、立場的には諦める選択肢なんて選べませんし」

野口「負けるつもりで試合する人なんていないですしね」
実直「みんなの前ではマネジャーとしての役割は果たしますよ。お恥ずかしい話ですが、実直真司としてはイマイチ乗りきれないというか……」

 実直マネジャー、立場的に表に出せないだけで、焦りを感じて悩んでいるようですね。

野口「実直マネジャー、大丈夫ですよ。野口は実直マネジャーがやってくれると信じていますよ」

実直「すみません……根拠の無い自信は持てないです……」

野口「この1年間……、営業3課には様々な問題が起こりましたが、すべて乗り切ってきましたよね?」

実直「はい……」

野口「その営業3課というチームを引っ張ってきたのは誰ですか?」
実直「僕……ですね」

野口「それが根拠です。1年間をもう一度、振り返ってみてください」

実直「うーん……たしかに……」

野口「はい! この1年間を見てきた野口が言うんですから間違いない!」

 野口もそうですが、こういう頑張ってもいけるかどうか……、そういうシチュエーションの時は焦りであったり、不安をいだきます。
そういうとき、自分の中で価値があると思う人に励ましてもらい、肯定してもらう。これだけで、かなり気分は変わります。
不安を完全に払拭できなくても、パフォーマンスは上がります。

野口「例えばですよ。実直マネジャーが求人フリーペーパー4色1ページを3社、天辺さんが最近仲の良いなにわニュー合金株式会社さんから中型の案件をクロージング」

実直「はい」

野口「張切さんは2件新規開拓、音無さんは来期分のヨミから今期に回せそうなところへの再アプローチ、張切さんと音無さんのクロージング同行」

実直「はい」

野口「提案書や企画書などのフォローは花咲さんが全面的に……と考えれば無理な数字じゃないでしょ?」
実直「たしかにそうですね。みんなできることがそれぞれ残っていますし、まだまだ可能性がある。やってみるという選択肢を選ぶのは当然ですね」

野口「そうでしょ」
実直「なんか、いけそうな気がしてきました!」

野口「さ、いつもの実直マネジャーでいきましょう」
実直「はい!」

 具体的に数字を出すと、達成に向かう手段がいろいろと見えてくるものです。とにかく、実直マネジャーもいつものパフォーマンスを発揮できそうな状態になりました。
あとは、目標を達成できるのかどうか! ドキドキです!

(16話に続く……)