第16話 それでも明日は必ずくる

■未来を共有する

 突然のピンチを迎えた営業3課。
今日は、短い期間でできる営業計画をみんなで持ち寄るミーティング。
どうなるのでしょうか……

実直「みんな、おはよう! 今日の議題は、こないだの件からだね」
一同「……」

実直「今期も残りわずか。そして、今の状況……。でも、僕は諦めるつもりはない」
張切「そうッスよ。ここまで来てそれはもったいないッス!」
実直「やれることはきっとあるし、僕たちはこの一年、いろんなことを乗り越えてきた。だから、今回もきっと乗り越えられると思っている」

 みんな、無言で頷いていますね。
この間の心配が嘘のようです。実直マネジャーもスッキリとした顔で喋れています。

実直「方法はいくらでもあるしね。例えば、僕が大口の契約を2つほど取ってくるとか」
音無「ぼ、僕が、し、し、新規のWEB契約を20件、と、取ってくればOKなだけです!」
張切「音無さん、死んじゃうんじゃないスか」
音無「えへへへ」

 音無さんと張切さんはいいコンビになりましたね。
プレゼン大会(8,9話参照)以来、息がピッタリになりました。いいツッコミですし、雰囲気が和みましたね。

実直「それじゃ、各自、聞かせて欲しい」
天辺「オレから先に提案させて欲しい」
実直「……天辺。……うん、それじゃお願い」
天辺「今回、大口の契約が延期になった。担当はオレ、天辺だ」
一同「……」 天辺「みんな、すまない。迷惑をかける」
張切「何言ってるんスか! 水臭いッスよ!」
音無「そ、そうですよ! 今まで、売上を引っ張ってきたのは、あ、天辺さんです」
実直「何のためのチームだって話だよ。しかも、失注したわけじゃない」
花咲「そうですよ。気にしない気にしない」
天辺「……すまない。死力を尽くす」

 天辺さん、やっぱり責任を感じていたんですね。
天辺さんが現地の事故を起こしたわけでもないですが、自分が担当だとどうしても引っかかるものです。
そんな天辺さんに対して、個ではなくチームという認識でフォローできるようになっているのは、営業3課の成長ですね。

天辺「オレは、自分のお客様に頭を下げて回ろうかと思っている。自分の言うのもなんだけど、『天辺くんだから』とお声掛けがあるところまではリレーションを築けている」
実直「結構、強い関係を築いているよね」
天辺「付き合いが長いからな」

 天辺さんは既存の顧客でリレーションを強固に築けている企業を何社も持っています。
それだからこそ、自分の価値を深く考えるような事件もありました……。(12話参照)
ひょっとすると大口の契約につながるかもしれません。

張切「自分はもう一度、潜在ニーズを掘り起こす作業をしようと思ってるッス」
実直「どんな感じの?」
張切「競合他社の掲載状況を再確認して、そこに営業をかける予定ッス。数をこなす形になるッス」
実直「了解! 張切さんらしい粘りに期待しているよ」

 張切さんは競合他社の切り抜きを活用するようですね。花咲さんに怒られてから(10話参照)きちんと切り抜きをこなし、一定の新規につなげてきた張切さん。
粘り強さを発揮して欲しいです!

音無「ぼ、僕は、僕をかわいがってくださっている業者さんのところに、あ、足を運ぼうと思っています」
実直「天辺と同じ感じだね」
音無「あ、天辺さんの、あ、足元に及ばないですが、頑張ってみます」
実直「よろしくお願いします」

 この一年、音無さんの成長が一番わかりやすかったように感じます。
春先、丁寧な営業だがいまいち爆発しなかった音無さん。
今では、自分のキャラを活かし、“頼みやすい営業マン”という地位をお客様の間で築いているとか。

実直「僕はフォローメインで考えています。必要があるところに関しては、全て同行フォロー。もちろん、同行だけでなく、できるフォローはなんでもします。フォロー以外は、自分の担当顧客はもちろん、新規顧客にも積極的な営業をかけていきます。……みんなと同じでやれることは全てやる!」

一同「……」
実直「花咲さんの仕事が増えると思うけど、少しの間、頑張ってね」
花咲「お任せくださいね!」

 花咲さんの資料作成は量が増えますが、今の花咲さんのモチベーションならきっとこなせます。みんなも花咲さんの仕事が大変なのは理解しているはずですし。

実直「目標は遠いようにみえるかもしれない。でも、やりようによっては、いろんな手段で達成できると思っている。僕らなら、なんとかなるんじゃないかな」
天辺「ああ、やってやろう」
花咲「うふふ、実直さんらしい感じですね。私もなんとかなると思ってますよ!」

 イマイチ締まらない挨拶ですが、それも実直マネジャーらしくていいですね。

実直「野口先生、気合入れる意味でも、アドバイスをお願いします!」

タスク管理と優先度の設定を

 いろんな案件が同時進行しているというのは、営業マンとしてよくある日常です。
今回のような短い期間というのは少ないですが……。

●グループウェアを最大限に活用する
 マネジャーの仕事はマネジメント。実直さんが行うべきことがらですね。
限られた時間の中、有効的に時間を活用するには、会議や社内打ち合わせの時間を削減しながらも効率よく営業に専念す必要があります。実直マネジャーが確実に数字を把握し、最新の指示をタイムリーに出すためにも、グループウェアで全員の状況を把握しましょう。

 訪問先、目的や狙い、先方の反応、成約後の原稿制作の手配状況、原稿入稿予定などを細かくスケジューリングさせ、グループ内全体の動きを把握します。
もちろん、チームのメンバーにグループウェアの活用を徹底させることも忘れずに!

●報告から優先度を指示
 野口は報告内容から、拾える部分があるかどうかを判断します。
今回のような短い時間で判断を行う場合は、ある程度ポイントを絞った報告ルールを決めるとよいです。

A:ニーズあり / リレーションあり / 予算可能
B:リレーションあり / ニーズは緊急性が低い / 予算可能
C:リレーションなし / 二―ズあり / 予算可能

訪問後に上記のランクを共有。その上で、実直マネジャーがクロージングのフォロー(同行など)を行うかを判断し、指示をします。

野口「野口からのアドバイスはこの2点! 実直マネジャーは未来への指示を意識してくださいね。みんなは、共有を意識して、頑張ってください! みんなならできる!」

そして、年度末納会

 営業3課はどうなったのでしょうか?
年度末を迎えた営業3課に向かいましょう!

野口「実直マネジャー! どうなりましたか?」
実直「野口先生! いやぁ……」

 実直マネジャーは、こんこんとこの10日間の話をしてくれました。
天辺さんは大口の契約を取ってきたが、日数的な問題から来期になってしまったこと、張切さんが新規のお客様を続けて5件開拓したこと、音無さんがスポーツ新聞の求人企画の枠を複数埋めたこと、花咲さんが不在がちな実直マネジャーの代わりに進行管理をおこなったこと、そのお礼に花見に行く約束をしたこと……。

実直「……僕の力不足で、未達で終わりました」
野口「やれることはやったんでしょう。そういう時もあります」
実直「はは……、ありがとうございます。大型契約の延期ということは考慮してもらえましたし、お咎めもありませんでしたが、やっぱり悔しいですね」
野口「今日は納会でしょう。とにかく、おつかれさまでした」
実直「ありがとうございます。会場に向かいましょうか。みんなは先に向かいましたし」

 さすがの実直マネジャーも落ち込んでいるようです。
仕方ないですね。マネジャー1年目、同期の中で期待されてのマネジャー就任でしたし。 これをバネにするしかないです。

 納会では、営業部署の売上目標達成を会長から皆に報告、拍手で迎えられる各部署の営業マネジャーの姿がありました。
そこに営業3課の実直マネジャーの姿はもちろんなく、複雑な笑みを浮かべ拍手をしている実直マネジャーを含む営業3課の面々。

野口「実直マネジャー。胸を張って拍手! ほら!」
実直「は、はい」
野口「あなたが胸を張らないと、やったことに意味がなくなります」
実直「……はい!」
天辺「実直、オレたちは十分やったよ」
実直「ああ」

 来年、壇上にいればいいんです。もう年度は変わりますしね。

■営業3課の目標は……

 納会も終わり、営業3課は天辺さんの送別会の打ち合わせをするため、会社へ戻ってきました。

張切「来月からは天辺さんもマネジャーなんスね」
天辺「ああ。北営業所だけどな」
実直「がんばってね」
音無「あ、あ、天辺マネジャー! が、がんばってください!」
天辺「まだマネジャーじゃない」
花咲「もういいじゃないですか~」
実直「いいじゃないか、天辺マネジャー!」

 天辺さんは昨年から言われていた通り、大阪北営業所に新設される営業4課のマネジャーへ昇進が内定しました。
その送別会をどこでするのかを和やかな雰囲気の中で決めているようですね。
おや……あれは……?

多々木「みんなやっぱりここにいたね」
実直「多々木取締役じゃないですか!」
多々木「おつかれさん。君らに伝えることがあったんだ」
実直「何でしょうか……」

多々木「営業3課、新規顧客獲得数、ダントツの1位だ。おめでとう」
実直「あ、ありがとうございます!」
多々木「数字的に今期は残念だったが、新規開拓の実績は本物だ。会長もご存知だ」
実直「は、はい!」
多々木「僕から気持ちだ。天辺くんの送別会やるんだろ? 楽しんでこい!」
実直「ありがとうございます!」
一同「ありがとうございます!」

 営業3課、さりげなく部署内目標は達成ですね!
きちんと評価もされているようですし!

花咲「実直さん! これでどこでもいけますね♪」

実直「天辺、何か食べたいものある?」
天辺「オレ、狙ってる魚の美味しい店があるんだよな……」

音無「そ、そこにしましょう」
実直「決まりだ!」

 最後の最後で逆転ですかね?
新規開拓という結果は、営業3課みんなで紡いだ成果です。
実直マネジャーおめでとう!

■営業3課は続いていく

 1ヶ月後……。 営業3課に新卒の営業マンが配属され、新人教育という挑戦が始まった実直マネジャー。
それでは様子をみてみましょうか。

実直「音無さん、それでは同行お願いします!」
音無「は、はい! ま、まかせてください!」
新人「行ってきます!」

 昨年4月の実直マネジャーが嘘のように平常心で仕事をしているようですね。
張切さんもオーバーリアクションで電話を受けていますし、花咲さんはニコニコしながら実直マネジャーを見ています。
いつもどおりの営業3課です。
天辺さんの代わりに、新人さんがいることをのぞけば。

 その天辺さん、いや、天辺マネジャーを指導しているのは、この野口ですよ!
今の彼は冷血軍曹のあだ名で呼ばれています。
1年間実直マネジャーを見てきたおかげで、マネジメントをそつなくこなし、ドライなマネジャーになっています。
あ、実直マネジャーが野口に気づいたようですね。

実直「野口先生! こんにちは! 実は新人で入ってきた……」

 これは何か問題が起きているようですね……。今度はどんな問題が実直マネジャーと営業3課に起きているのでしょうか、さっそく歩きながら聞いてみます。
と、その前に……。

野口「実直マネジャー、マネジャー2年目が始まりましたが、どうですか?」

実直「僕の経験値もあると思いますが……」

野口「はい」

実直「管理職は難しいですね」

 実直マネジャーのマネジメントはまだ始まったばかり。
これからも彼とそのチームに、いろんなことが起きることでしょう、
1年間の経験で、いろんなことを学んだ実直マネジャー。彼ならきっと、これからも成長し続け乗り切ることができるはずです

がんばれ! 実直マネジャー!

(終わり)